ニュースリリース
「全国でも稀有な生産技術を活用した、国内屈指の名牛といわれる『安福久』の一卵性双子の商用展開の実現」について
2020年10月19日
畜産業界のイノベーション!
「全国でも稀有な生産技術を活用した、国内屈指の名牛といわれる
『安福久(やすふくひさ)』の一卵性双子の商用展開の実現」について
<あおぎん>チャレンジプログラムの採択先である有限会社小比類巻家畜診療サービス(代表取締役 小比類巻 正幸)が全国でも稀有な技術を活用して生産した「安福久」の一卵性双子が、県内市場で初めて取引されたことをお知らせいたします。
当社が採用する「OPU-IVF(経膣採卵-体外受精)由来胚の2細胞割球分離法」は、繁殖農家の高齢化等に伴う黒毛和種繁殖雌牛頭数減少といった業界を取り巻く構造的課題に対する有効な解決策としても期待される手法です。
本手法は技術的なハードルが高く公的な試験研究機関などで実施例はあるものの、民間事業所が実施している事例はほとんどないのが現状です。当社では年間のべ600~700頭の移植実績を有しており、そのうち2細胞割球分離法により作出された受精卵の移植は年間20頭前後にのぼります。
本事例は畜産経営の高度化に資する貴重な一歩であると認識しており、当社では更なる研究・技術向上に取り組むことで、畜産業界の発展に向けて尽力してまいります。
青森銀行では、2019年度から、先進的な技術や斬新なアイデアを活用し新規事業に挑戦する事業者の皆さまをハンズオン支援する「<あおぎん>チャレンジプログラム」を実施しております。
本技術は本県畜産業のイノベーションを進める大きな可能性を持っています。当行では本技術の更なる精度向上に向けた同社取組への支援を通じて、地域経済の発展に貢献してまいります。
<参考>
1.OPU-IVF(経膣採卵-体外受精)由来胚の2細胞割球分離法
OPU-IVF(経膣採卵-体外受精)技術は、従来の過剰排卵処置による体内受精卵採取法(SOV)と比較して、ホルモン処置が不要であり母体に対する負担が少なく、1〜2週間間隔で実施が可能のため多くの受精卵の作出が可能となります。また、妊娠牛や子宮疾患を抱えている繁殖障害の母体からの採胚も可能などのメリットが望めるため近年民間事業所等での普及が進んでおります。
本手法は、体外授精工程の2細胞期にプロテアーゼ処理をして透明帯から細胞を取り出し分離したのちにそれぞれを発生培養することで2つの割球分離胚を発生させる技術であり、これらの分離胚は、ペアで移植することにより遺伝的に同一な1卵性の双子となり、従来の2卵移植と比較してオス、メスの双子になった場合、メスが生殖能力を持たないフリーマーチンの出現を防げることや、限られた採取卵数を倍増し利用できるなどのメリットが期待できます。
2.安福久について
安福久は全国的に名の知られた優良な種雄牛であり、この血統を母系に持つ子牛はサシ(霜降り)の入りや肉質改良能力が高いことから、全国的にも高値で取引されております。
安福久を父に持つ本県黒毛和種雌牛頭数は全体の2割にもおよび、この割合は第一花国(本県基幹種雄牛)に並んで最も高いものとなります。
3.安福久の一卵性双子について
(1)市場名 青森県家畜市場
(2)開催日 2020年10月9日(金)
(3)子牛概要
2018年3月に2産目の交雑種雌牛に2細胞分離胚の新鮮卵移植を実施し、2019年12月に双子分娩に至りました(出生体重は、よしひさ1509が32kg、しげひさ1510が30kg)。本年10月9日の市場におけるメスのトップセールスは税込価格144万円(父-安福久)であり、よしひさ1509、しげひさ1510は、それぞれ2、3番手の取引額となりました。
名号 |
よしひさ1509 |
しげひさ1510 |
種別/性 |
黒毛/メス |
黒毛/メス |
父 |
安福久 |
安福久 |
母 |
かずみ |
かずみ |
日令/体重 |
299日/298kg |
299日/308kg |
落札金額 |
133万円(税込) |
123万円(税込) |
(写真)分娩直後の「よしひさ1509」「しげひさ1510」
以上